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「そんなに俺が好き? 本気なの?」
目を合わせると、竹下は真顔で見つめ返してきた。
「好きだって、何回も言ってるのに」
梨々花はまた泣きたくなってきた。
「わわ、ごめん。泣くな泣くな」
竹下は中腰になり、梨々花の頭を両手で引き寄せた。そのまま腕に抱き、小さい子でもなだめるように後頭部をよしよしと撫で始める。
梨々花の額が竹下の胸に押しつけられ、薄いシャツを通して体温を感じる。制汗剤か何かの爽やかな柑橘系の香りがした。頭が真っ白になって何も考えられない。
「俺さ、トラウマがあるんだよね」
密着しているせいか、竹下の声が頭に直接響くような感じがした。
「中学ん時、好きって言われてつきあったら、見映えするアクセサリーみたいに軽く扱われて、こっちが本気になったら重くてヤダってポイ捨てされてさ……告れば簡単につきあえるって噂されてるのも知らないで、モテてると勘違いしてたんだ。かっこ悪いよな」
竹下は冗談めかして笑い、梨々花から手を離した。屈んでいた腰を伸ばして背を向ける。
「女の子に好きとか言われると、あの頃の自分を思い出して嫌なんだ」
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