第三章

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3 「あ、親父? 僕だよ、僕~。至急お願いしたいことがあってね? 病気の人を助けたいからお金……」  プツ。 ツー…… ツー……  スピーカーに設定しているスマホから空しく通話音だけが聞こえる。黒崎はスマホ画面をスワイプさせて、通話を切った。 「あれ~? 困っちゃうなぁ、もう遥くんのお母さんのところに救急車を向かわせちゃったのに」  黒崎はタブレットを片手に持ちながら、もう一度、電話を掛けた。今度はスピーカーに設定にせずに耳に当てるようにして。 「あ、親父? 僕……え? オレオレ詐欺? 違うよ~、僕って言ってるのにどうして”オレオレ”詐欺なの? ”ボクボク”詐欺が正しいんじゃないの? てゆうか声で分かろうよ! 息子のぼk」 プツ。ツー…… 「もぉ~~~~~~! 親父ったら痴呆かなぁ?」  黒崎は今度こそスマホを円卓においてふて腐れた。眉をこれでもかとハの字に歪めて口を尖らしている。 「お前の親父は、なんで息子の電話番号を登録していないんだ?」  向かいに座っていた勝鬨が腕を組みながら尋ねる。ガラケーだろうとスマホだろうと家族の電話番号は登録するものだ。  黒崎は柴犬みたいな瞼をきょとりと瞬かせた後、さきほどまで使用していたスマホを指さし「だってこれ、そんちゃんのだもん」と平気でのたまった。  それを聞いた鷹瀬がギョっとして振り返り、さっとスマホを回収した。 「どうしてご自分の携帯電話を使わないのですか! 医者ならスマホもガラケーも持ち歩くものでしょう!?」 「僕、携帯不携帯なの」  悪びれもせず、しれっと黒崎は言う。 「うまいことゴロ合わせても駄目です! 勝手に私のスマホを使わないでください!知らない番号から掛かってきたら誰か解る訳がないでしょう!」  黒崎の態度がいちいち勘に触れるのか、鷹瀬は黒崎に手厳しい。えええ、と不満を漏らす黒崎は仕方がなさそうに勝鬨に向かって手を伸ばした。同じく仕方がなさそうに自分のスマホを黒崎に渡す勝鬨もまた、不満そうである。
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