天使は鳥籠で腰を振れ

第三章

ジュウにいっぱいあやしてもらうんだよ？

　黒崎の言葉がふわりと脳裏に浮かんでくると、まごついた言葉が綺麗に舗装されていった。
「――――あの、もう少しここに……」
　そのままぽつりと零してしまった。
　自分が何を口走ったのか、勝鬨が瞼を見開いたことで理解する。
　堀切はまた顔が熱くなって、すぐにおしぼりで顔を隠した。鉄板を冷やしたときみたいにシュー、と湯気が立ちそうだ。

　何を言っているんだろう。黒崎に絆されすぎなのかもしれない。
　昨晩までのことを思い出せば、ベットに引き留めるなんてどうかしている。

「その、他意は無いんです……ただ、なんか……」
「――別に、構わんが」
　まごついている堀切の言葉を遮り、勝鬨はぎしりとベットを鳴らして乗り上げてきた。おしぼりを持ち上げてそっと勝鬨の様子を伺うと、すぐ傍に仰向けに寝そべりスマホの操作を始めていた。勝鬨のすいすいと滑る指先がそうさせるのか、温室全体が消灯し始める。寝室も暗くなって、僅かに届くのは星と庭先の灯だけになった。