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黒崎から連絡があったのは数日後のことだった。
寝付きが良くないからか、昼夜逆転しつつあった堀切が目を覚ましたある日の正午頃、隣に寝ていた勝鬨が枕に背を預けながらiPadを眺めていた。
『あ、遥くん起きたの? おはよう~~』
目を擦りながら画面を覗くと、二分割された画面の片方に黒崎が映っていた。テレビ電話機能を使った対話の最中だったらしく、もう片画面には活字がびっしり映っていた。
「黒崎先生……!お久しぶりです!あの、母の容態は大丈夫ですか!?」
起き抜けに顔を合わせた黒崎にに食いつくと、隣の勝鬨が苦笑していた。
『うん、お母さんは病室で安静にしてるよ。昨日ね、検査の結果も出そろったのと、手術の日程も決まったから、ジュウに報告してたんだ~』
堀切の勢いに動じず、黒崎はほわほわと笑っている。黒崎の背後が診察室に見えるのと、白衣を着た姿で映っているので、きちんと医者に見えていた。それだけで不思議な安心感で満たされる。
「ありがとうございます!何からなにまで……っ」
じわ、と目頭が熱くなる。堀切はiPad画面に向かって深く頭を下げた。
『いいのいいの~。それにまだ手術が終わったわけじゃないもの。むしろここからが面倒くさくてね』
堀切が顔を上げると、黒崎は眉をハの字に寄せて困り顔をしていた。一縷の不安を覚えて勝鬨に視線を向けると、勝鬨もまた難問を眺めるような顔で唸った。
「問題が二つあるらしくてな。一つは心臓の手術をするのは良いんだが、前例がほぼないらしい。黒崎のチームが必死になって医学論文を漁っているんだが、前例が見当たらないのは中々おっかねぇことになる」
堀切は新たな問題に目を白黒させた。平坦な道のりになるとは思っていなかったが、この二人から説明を受けるとより一層困難なのだと恐れおののいてしまう。
『もう一つはね~、ご家族の承認が取れないの~。これが一番困っちゃうんだよね』
「え??」
二つ目の難問は寝耳に水だった。しかし、堀切はすぐに悟った。
「もしかして……司ですか?」
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