Prolog

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 観客席が生き生きとした笑顔で俺だけを見ている。  馴染みある光景だ。昔からずっとこうやって生きてきたし、これからもそうだと思っていた。  黄色い歓声、振り上がる腕、時には舞い上がる花、あの劇団で演じているとき、俺は全てを手にしたような気分だった。  けれど今にして思えば、そんなものは思い上がりだったのかもしれない。よく耳を、目を凝らせば、俺の目の前に広がるこの歓声も、綺麗なものなんかじゃない。 「それでは皆さん、愛僕(あいけん)オークションを始めます! エントリーナンバー1、堀切遙! 5000万円からカウントアップスタートです!」  狂った歓声が上がる。  俺はこれから、誰かに飼育される。
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