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「でも、俺が買われたお金は母の治療費に宛てられるんです。母が助かってくれれば、嬉しいし、余ったお金は劇団の再建にも回っているはずで……。だから、やっぱり、ありがとうで良いと思います……」
ぽそぽそとおしぼりの下で話す言葉は勝鬨に届いているようで、再び溜息が返ってきた。けれどもう怖いと思わなかった。
「お人好しも大概にしろ。大体、お前の親が助かっている保証もないぞ」
勝鬨が溜息交じりに漏らす。確かに、重い病に冒されている母の病状が100%助かる確率があるわけではないが――
「そうだよねぇ、愛僕のオークションなんて完全に闇だから、売上金が真っ当に使われることなんてないよねぇ」
さっきからワインをガバガバ飲んでいる黒崎が世間話のように相づちを入れた。
「――え、?」
堀切は目を見開いた。聞き捨てならないことを聞いてしまった。
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