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この頃の私は、裕子と会えなくなってとても辛い毎日が続いていたけれど、できる限り早く裕子のことを忘れて、いつか結婚したいと思っていた。
私は、毎日の仕事に追われて、裕子のことも少しずつ記憶が薄れていったけれど、裕子のことを完全に忘れることはできなかった。
私が30歳になる頃、結婚したいと思う女性に出会ったけれど、プロポーズには至らなかった。
理由ははっきりしなかったけれど、プロポーズできなかったのは、私の心のどこかに裕子の存在があったことと、プロポーズするとまた断られるのではないかという恐怖心があったからだと思う。
こんなことがあって、30歳を過ぎたあたりから、私は結婚願望が薄れて、このまま気楽な独身生活を好むようになっていた。
毎日仕事を終えて自宅に帰ると、特に冬の時期は暗くて寒いアパートの一室に帰るわけで、この寂しさはあったけれどすっかり慣れてしまった。
このような生活を33年あまり続けて、私はとうとう55歳という年齢を迎えてしまった。
60歳の定年まであと5年で、経済的にも余裕が出てきた私は、この頃から夜の街に出て飲み歩くようになっていた。
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