瓦礫の下

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瓦礫の下

 ある日、作文に書かれた事が起こった。  放課後、二人はいつものように戦争ごっこをしながら寄り道をした。辺りを警戒しながら走っては物陰に隠れ、また飛び出して傘を撃ちながら走るという遊びを繰り返しながら、工場の秘密基地へと急いだ。工場の敷地に着くと、ランドセルの端に刺した竹製の物差しを中途半端に引き出して猛が秘密基地本部と交信をする。 「本部、本部、応答願います。タケシとアキラが帰還します。援護を願います!」  猛の援護要請が終わると、私はリコーダーを取り出して望遠鏡に見立てて辺りの様子を窺う。誰も居ないことを確認すると、無言のまま腕を前へ振って前進を促す。そして、二人は身を屈めながら走り出し、時々匍匐前進をしながら秘密基地に近づいて、いつもの様にランドセルに傷を付けながら二人は瓦礫の中へと入って行く。  その日、猛は太い針金に引っかかるからと、ランドセルを脱いで先に瓦礫の中へと放り投げた。 「何しよん、ランドセルがぼろぼろになるんやないん?」  当時、私はいつも親から、物を大切にするように厳しく言われていたので、猛のようにランドセルを放り投げるような乱暴なことは思いもつかなかった。 「別にオレのやけ良いやん。」  そう言うと猛は瓦礫の中に素早く入って行った。私はそんな猛のことを時々、人の言うことを聞かない子供だと少し軽蔑することもあった。意固地になった私は、ランドセルを背負ったまま中へと注意しながら潜り込む。しかしその日は運悪く、太い針金がランドセルの横の帯の所に知恵の輪のように掛かってしまい、ランドセルを背負ったまま手を後ろに回しても、針金はなかなか外れてくれなかった。イライラしていた私はヤケになり、体ごと勢いをつけて一気に外そうと試みた。 「あっ!」
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