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親友
小学生時代、私が恋していながら胸中を打ち明けることのなかった女の子がどんな顔をしていたのかを確かめるため、滅多に入る事のない書斎の隅にあるアルバムを取ることがあって、まず女の子の顔を見つけるのだが、好きだった理由を探そうとページをめくっていると、ある少年との写真に必ず目が停まる。それは林間学校での一コマ。少年・猛は低い塀にまたがっていて、私は柱に寄りかかり、片膝を立てて彼と話している。そこに〈女子〉達の声がかかる。
「アキラくーん!タケシくーん!」
普段、女子達から声がかかることがない二人は驚いて黄色い声の方に顔を向けた。その時の一コマである。生徒に人気の若い男性教師が面白い場面を撮ろうと回っていたのだ。その後、教師と女子達は大笑いをして盛り上がる。
「アキラくんカッコいいー!」
私は猛と顔を見合わせながら苦笑い。私が好きだった貴代子ちゃんも皆に混じっていた。二人の写真は組の名場面としていくつか教室に貼られたが、思えば二人はいつも一緒に行動していて、 彼が私以外の子と連んでいるところを見た記憶が無い。私が転入する以前、クラスメートに虐められていたのではないかと思われる。彼がクラスメートにからかわれた時、彼は嫌そうな顔をしただけで何も言い返さなかったことを私は不思議に思った。しかし、私といる時は何故かリーダーシップをとった。
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