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触れ始めてから解った事だが、どうやらコレは、わざわざ選ぶ必要は無く、幼少期の記録から順番に整理されていくらしい。
媒体も様々で、写真、手紙などの文字、絵、記念品、動画など、触れる度に僕の目の前に広がっていく。
ソレに従い、僕の外見も変わっていった。
中でも文字…クラスメイトが書いた作文などは、文字が苦手で読書嫌いの僕だったが、眠くならないのはとにかく助かった。
それにしても、両親が記録したモノ以外にも、知らず知らずにこんなに周りに僕の事が記録されていたとは…
中には誰かを盗撮した画像に一瞬、僕が映りこんだモノまである。
改めて、記録媒体の進化に驚かざるを得ない。
まぁ今に限ってだけ言えば、そのお陰で中学生以降、あまり変化しなかった僕の外見が、大人になれたのだが。
ともかく、僕の記録の整理は辛い思い出もある幼少期を通り抜け、順調に結婚まで進んだ。
結婚式、出産、七五三など…
次第に記録が家族中心のソレに変わってきた頃、僕は記録に触れるのを躊躇った。
「どうかシマシタカ?」
不意にlogに声をかけられ、慌てて取り繕うように姿勢を正す。
「…いや、少し感傷的になっただけだ。問題無い。ここからはじっくり観たいと思っただけさ。」
僕はlogに嘘をついた。
本当は解っていたのだ。
この先に、僕の人生で一番辛い出来事が待っている事を。
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