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ハルキは憮然とした表情になり、お通しのチップスを一口かじった。
短くセットされた髪、男性用スーツをラフに着こなす私の友人のハルキは所謂タカラヅカ系だ。
いつも胸に晒しを巻いていて、鍛えられた身体をしている彼女をぱっと見で女と認識するのはほぼ不可能だろう。
「いつも思うけど、シマは俺のこの格好、男装だって思ってない?違うから。俺は体は女だけど、心は男ってやつなんだって」
「でもハルキ、テレビでよく見る人と違って、女の子のままじゃん。ほら、性転換手術って言うの。あれやってないし、テレビの人とは違うのかなって」
「ああ……シマには人ごとだもんなぁ、こういうの」
ハルキは頭を抱えて、私から視線をそらしたまま話す。
「性転ってさ、金はかかるし、ホルモン投与で体調が悪くなって、精神も不安定になる。それだけ苦労をしまくっても、生殖能力は再現できないから、完全な『男』にはなれないんだよ。テレビに出てる人は知らんが、俺はそういうのはごめんだね」
「ふーん」
生殖能力のか大事なのかなぁとか、ハルキは結局女の体のままでいいんだとか、そもそも性別ってそんなにこだわる必要あるのかなぁとか色々考えたけど、口にするのはやめた。
私にとって、ハルキは気のいい友だち。これ以上突っついて、この関係が壊れるようなことがあったら嫌だ。
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