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「お待たせしました。ドライ・マティーニです」  と、そこでバーテンがハルキの注文を持ってきた。ショートグラスに、白みがかった透明のカクテル。そっとオリーブが添えられている。  ハルキがお礼を言うと、バーテンは元の場所へ戻っていった。 「ハルキって、結構きつめのお酒好きだよね。弱いのに」 「……。まぁいいや。そんなに変か?こういうの、味の好みの問題だと思うんだが」 「えー?でも、飲める量が減っちゃうじゃない。なんか、勿体なくない?」 「ああ……シマはお酒は量にこだわるタイプなのか。どうやら、認識に食い違いがあったようだな」  ハルキはオリーブを口に入れ、ゆっくりとそれを噛む。  ハルキの次の言葉を待っている間、私はなんとなしにカウンターテーブルの方を見た。  そこでは、一人の女がずっとバーテンに話しかけていた。カクテルにはほとんど口をつけないで、延々と仏頂面で、何かを話し続けている。聞き耳を立ててみると、等も恋愛の愚痴らしい。  地元の人間だと思っていた相手の男が、実は仕事でたま玉そこに来ているだけの人間だったらしい。相手は帰った後も自分と付き合う気のようだが、私は遠距離恋愛とかパスだから。そんな感じの内容だ。  バーテンはこういうきゃくには慣れた物で、適度に相槌を打ち、内容に沿った返事をしている。  面倒そうな女だなぁと思って注意をハルキの方に移すと、ハルキも同じく、女の話を聞いていた。 「認識にずれがある……ギャップか……」  するとハルキは度数の高いマティーニをグッと一飲みし、それから話し始める。 「そんなの、生まれた頃から、ずっと感じてきたことだ」
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