■第一話 金魚倶楽部とカプチーノ

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 なので渉は、気まずそうにしている源蔵さんに笑って礼を言う。  どこにでも、こういう噂話は立つものだ。Iターン、Uターンなんて言われているが、ここは人口の流出はあれど、外から入ってくる人は少ない。  閉鎖的、という言い方には少し語弊があるかもしれないけれど、決まりきった人しかいない場所で新しい人が入ってくれば、それがまだ高校生の女の子であれば、噂はあっという間に広がるし、詮索されることだって多い。  でも渉は、そういうところも含めてこの町が好きなのだから、仕方がない。  野乃には煩わしいことも多いかもしれないけれど、まあ、源蔵さんの血を引く元樹君がそばにいてくれれば、少しは煩わしい思いをすることも減ってくれるかもしれない。 「なんだよ渉、すっかりここの人間になっちまって」 「はは。そう思っていただけて光栄です」  少しも動揺せず鷹揚に受け流す渉に、源蔵さんがフンと鼻を鳴らして苦笑する。  嫌な顔のひとつでもしてくれたら気が楽なのに、なんていう声が聞こえてきそうだ。  しかし、これも田舎の宿命なのだ。いちいち気にしていては、大切なものを見落としてしまう。
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