■第一話 金魚倶楽部とカプチーノ

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 いかんせん、野乃は今、不安定だ。  渉と元樹君の心配は尽きない。 「……俺、やっぱ、ちょっと探してきます」  元樹君がそう言って立ち上がったのは、それから数秒もしないうちだった。  野乃を待つ間、ずっと行こうかどうか考えていたのだろう。  明日も夜中から源蔵さんを手伝って漁に行くのに悪いな、と渉は申し訳なく思う。  でも元樹君のおかげで渉の腹も決まった。 「俺も一緒に行くよ。ここで気を揉んでたって仕方ないしね」  心配なら迎えに行けばいいだけの話だ。  午後六時を過ぎれば、お客様は入らない。  そうして二人は店を一時閉店し、野乃を探しに行くことにした。  ここに来てまだ三日、土地勘もないことだし、文香さんを追いかけたはいいが、そのうち迷ってしまったことも考えられる。  のどかな海辺の町だが、路地はけっこう入り組んでいるし。
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