■第一話 金魚倶楽部とカプチーノ

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 店に戻る道すがらに尋ねると、文香さんは幸い、まだ電車の時間に余裕があるそうだ。  聞けば隣県から旅行に来ているそうで、遅くとも明日の始発にさえ乗れれば仕事には間に合うという。  話が長くなるようなら店に泊めてもいいと渉は考える。店舗兼住宅には野乃もいることだし、そのへんは特に警戒はされないだろう。  といっても、文香さんさえよければ、という話だけれど、その場合はケースバイケースとしよう。  元樹君のほうも、嫌がる野乃と並んで店に戻る途中に、今日は遅くなる旨を家に連絡していた。  引き留める形になってしまったのはこちらなので、遅くなるようなら晩ご飯と、遠慮するかもしれないけれど、あとで家まで送ってあげようと思う。 「お待たせいたしました、カプチーノです。野乃ちゃんと元樹君にはアイスコーヒーね。砂糖とミルクはテーブルに備え付けのがあるから、いい味に調整してね」 「ありがとうございます」 「ごちそうになります」 「いただきます」  三人でテーブルについている文香さんたちの前に、それぞれカップとグラスを置く。  めいめいに礼を言う三人に目を細めると、渉も自分用に淹れたブレンド手に元樹君の隣に腰を落ち着ける。
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