■第一話 金魚倶楽部とカプチーノ

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 何度も頭を下げつつ並んで帰っていく二人を見送ると、店内が急に広く感じられようになった。  もともとそんなに大きい家ではなかったので、店舗に改装した一階部分も全体的にこぢんまりとしているけれど、お客様がいなくなっただけでこんなに広々と感じられるなんて、少し不思議だ。  空いたカップをカンターに下げつつ、すっかり日が落ちた窓の外をぼんやり眺める。  すると背後から「渉さん」と声をかけられた。振り向くと、普段着に着替えた野乃が「……文香さんたち、どうでした?」と心配そうに尋ねた。  気を利かせて部屋に引き上げたはいいが気になって仕方がない、といったところだろうか。元樹君も今頃、晩ご飯を食べながら文香さんたちを気にしている頃だろう。 「ああ、うん。俺の勝手な印象だけど、近いうちにうまくいくんじゃないかなって思う。文香さんのほうも最後には美味しくコーヒーが飲めていたようだったし、上尾さんもそんな文香さんに優しく笑いかけててね。見ててとっても微笑ましかったんだ」 「そうですか、よかった……」  ほっと息をつく野乃の近くを通って、カウンターに引っ込む。
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