■第一話 金魚倶楽部とカプチーノ

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「それはやっぱり、野乃ちゃん次第なんじゃないかな。野乃ちゃんが今日も鰹が美味しいと思って食べてくれてるように、心の在り方っていうか、気持ちの部分が関係してくるんだと思うよ。俺はただコーヒーを淹れてるだけだから。そりゃ、いつも美味しいコーヒーを淹れたいなとは心がけてるけど、俺だけの力じゃどうにもならないこともあるし」 「そうですよね……。あ、でも、さっき飲んだアイスコーヒー、とっても美味しかったです。まだよくわからないけど、たぶん、そういうことなんですよね」 「そうだね。そうかもしれないよね」  ふっとわずかに目元を緩める野乃に、渉も眼鏡の奥の目を細める。  野乃が自分が淹れたコーヒーを美味しいと思って飲んでくれるなら、いくらでも淹れたいと思うけれど、こればっかりは、きっと〝どうにもならないこと〟なのだろうとも思う。 「リクエストしてくれたら、いつでも淹れるよ」  言うと野乃が嬉しそうに「はい」と少しだけ声を弾ませた。  そのまま味噌汁の椀に口をつけようとして、ふと何かを思い出したように顔を上げる。
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