■第二話 エスプレッソにはスプーン一杯の砂糖を

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 さすがにニ十分もあれば渉もとうに朝食を食べ終え、食器を下げたついでに洗い物まで終わらせている。  しかし年頃の女の子にしては、野乃の支度は少し早いような気がしないでもない。  今の子たちはこんなに準備が早いものなのだろうか? スロースターターの渉には、野乃の準備の早さは羨ましくもありつつ、なかなかに驚異だ。 「じゃあ、行ってきます」 「いってらっしゃい。気をつけてね」 「はい」  けれど、学校のほうにも慣れてきたようで、登校していく野乃の声や後ろ姿には、送り出すこちらも安心する部分が増えてきた。  いきなり環境が変わったせいももちろんあっただろうけれど、以前は少し背中が丸まっているように見えていたのだ。  しかしそれも最近ではほとんど見られず、渉は叔父夫婦に一つ面目が立ったことに毎朝ほっと胸を撫で下ろす思いだ。  元樹君の話では、やはり集団で来られるとビクビクしてしまうようなところがまだ多少見受けられるそうだけれど、クラスで少しずつ喋る相手もできてきたようで、その点では安心して見ていられるようになってきたという。  きっと少しずつ、けれど確実に野乃は変わっていっているのだろう。  彼女の保護者として、渉はそのことがとても嬉しい。
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