図書室とぷうさんと私

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 駅に向かって並んで歩く。身長が目立つので男子と歩くのは好きではなかったのだけど、風巻先輩ならそんな心配もなくて居心地が良い。  横目に見上げると目が合ったけど、先輩のほうからすぐに逸らした。顔色は暗くて見えないけど、照れているのだろうか。可愛い。 「私、先輩の期待に応えられるように頑張ってみます」  いろいろ思うところはあったけど、とりあえずは言われたことをしてみよう。ここで焦ってあとから期待外れだって言われたら、たぶん立ち直れない。 「だから、来週も誘ってくださいね?」  先輩は照れたような気まずいような顔で「次は、割り勘でもいいかなぁ?」と言って笑った。もちろんですとも。  急に距離が詰まってしまったけど、今日はここまでにしておこう。あ、でも駅に着くまでに連絡先は交換しておきたいな。これから週末、月曜日まで会えないんだし。  高校二年生の春。私にもやっと春の気配がやってきた。
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