図書室とぷうさんと私

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図書室とぷうさんと私

 私、石島香耶(いしまかや)は大きい。それもただ大きいだけの女だ。177cmの長身は持て余すばかりでなんの役にも立っていない。  大きいぶんだけ動作が鈍くて、せっかくの親から貰った身体を活かせていないと繰り返し言われてきたのでスポーツは嫌いになった。どのくらい嫌いかというと、具体的に授業以外では絶対にしたくないくらい、だ。  身体を動かすことが嫌いというわけではないのだが、派手にやると目立つので部活や委員会も屋内から出ないようなものばかり選びがちになる。  それならそれで図体の割に大人しい文学女子にでも成れたら良かったのだけど、それもそうもいかなかった。  可愛さとどうしても縁遠くなりがちな体型をせめて少しでもカバーしようと他のところでは気を遣うようにしている、自分ではそのつもりだった。  ふわっとしたウェーブをハーフアップにした髪型も紅いつるのアンダーリムの眼鏡も自分では気に入っていたのだけれど、男子が陰でAVの女教師みたいだと言っているのが耳に入ったときには変な呻き声が出た。  カッとなって話に割り込んだ私についた女教師に次ぐあだ名は女王様。自業自得とはいえ、自分の気性が嫌になるし腹が立つというより悲しくなる。スタイルが良いことだけは誰にはばかることもなく自慢出来るポイントだけど、それも二つの不名誉なあだ名の後押しにしかなっていないと思うとなおさら切なかった。  大きいと言えば声もそうだ。甲高いわけでもないのに良く通る声は発するたびに注目を集めた。誰が言ったのだったか腹から声が出ているのだそうだ。 「そこのひと、静かにしてください!」  静かな図書室では尚更よく響く。意識しているわけではないのだけど、声はひとよりかなり大きい。  私が所属している図書委員の仕事には図書室で相応しくない行いをしている生徒を注意することも含まれるが、私は気付くとついその場で注意を口にしてしまう。そうすると距離があるぶんどうしても声が大きくなり注意された生徒も注目を集めてしまう。控えめに言っても私は利用者に少し煙たがられていた。
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