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「さいころ」「しゃべる鳥」「母」
「人生はすごろくと一緒だ」
枝の上の鳥は囀りだした。
樹齢40年はありそうな木の下で、僕は寝転んでいた。
ただあてもなく、ちょっと疲れてしまったのだ。
ある人は僕に後ろ指を指し根暗だと笑い、ある人は僕の目前に手口元を押さえて噴き出し、かっこ悪いという。
僕は何もしていない。ただ、こうやって生きてきただけだ。
この世界は理不尽で不条理でい一方的な蹂躙を好む。
出る杭は打つくせに同じ高さに並んだ色の違う杭を周りの奴は引き抜こうとやっきになる。
「だから、お前は出す目を間違えたのさ。一回休み、泥沼だよ」
鳥は楽しそうに囀る。
うるさい。お前に何が分かる。
「もしかしたらこの先のマスもいいことが書いていないかもよ。いやはや、君の人生というすごろくはもしかしたらとてもとてもいいものとは言えないのかもしれないなあ」
うるさい。だったらどうだというのだ。
「君の母親のすごろくはとてもいいものだったんだろうね。なんてったって玉の輿だったのだから。ま、そんなものも続かなかったみたいだけど」
母はいつも言っていた。
幸せはいつ崩れるかわからない。しがみつくのを忘れるなと。
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