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「ああ、おじさんは肉屋さ。いろんな種類の肉を卸している。今日は…そうだな、仕入れに来たんだ」
お肉屋さんか。きっとお店で牛とか豚とかを捌かなきゃいけんいんだろう。大きな体や、腕は納得だ。
「このあたりでいつも仕入れているの?」
こんなところにお肉になりそうなものなんてないのに。
「ああ、いつもは森で仕留めるんだが、坊主を見かけてな。気になって出てきたんだ」
「ああ、お仕事の邪魔しちゃったかな」
おじさんはにっこりと笑った。
「いやいや、坊主が一人だったからな」
心配してきてくれたんだろうか。
「ごめんなさい。すぐに村に帰るね」
「いやいや、一人で村に帰るなんてとんでもない」
送ってくれるんだろうか。
きょとんとした顔で顔を傾けた僕におじさんは優しく語りかけた。
「坊主はここに一人で来ちゃいけないって言われてないのか」
「ううん。いわれているけど、来ちゃった。ほかの大人たちには内緒だよ」
「どうして一人で来ちゃいけないか聞いていないのかい」
「知らない。でも、森に一人で入っちゃいけないのは分かるよ」
おじさんはにっこりと笑った。
「甘いねえ。甘い甘い。砂糖のようだ。坊主、砂糖って知っているかい」
「さとう?何それ」
「はちみつみたいに甘い白い粉状のものさ。とっても甘いんだよ」
「へー。食べたことないなあ」
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