24人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
いい話を聞いた。
臆病でのんびりやのイチローに通用するかどうかわからないが、とにかくやってみることに。見張りを中止し、大あくびをして、さて、これから寝るとするかと寝床へ歩きだしたイチローを止めた。
「イチロー、ネズミを見たでしょ。アンタも猫の端くれなら、なんとかしてちょうだい!」
イチローは、「なんだい、これから寝ようとしてるのに」というように、私と目を合わさず、のそのそとキッチンの隅にある寝床へもぐりこんでしまった。
これじゃ、無理だわ。明日また対策を考えようと思い、私も寝ることにした。
翌朝、キッチンに来た私は、目を疑った。イチローの食器の横に何かある。よく見ると、ネズミだ。死んだネズミが2匹、並べてあった。
「マジ?」
イチローの寝床をのぞくと、まだ熟睡中だ。しかし、彼以外に手を下すものはない。
私の言葉をしっかり聞いていたのだ。真夜中にネズミの気配を感じて、そっと寝床から忍び出て一撃、今度は成功したに違いない。
「イチロー、偉い偉い!すごいじゃない。ありがとありがと!」
寝ぼけた顔で起きてきたイチローを抱き上げ、頭を何度もなでてやった。イチローはなでられる度にあごを上げ、心なしか、得意そうだった。
「やる時にはやりますぜ」みたいに。
そして驚いたことに、次の朝にも再びネズミが2匹置かれていたのである。イチローの野性が目覚めたと見える。
ウソのようなホントの話。やっぱり言ってみるものである。もちろん残っていたと思われるネズミたちが即刻引越したことは言うまでもない。
猫たる本懐を示したイチローは21歳まで生きた。
最初のコメントを投稿しよう!