その手に残されたのは。

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 今も忘れられない悪夢のような時間を過ごしたあの日が近づいてきた。今年も急に寝つきが悪くなって、カレンダーを見て、ああ、と気落ちした声とともに息を吐く。  当時、自分の意思で花言葉を調べたのは生まれて初めてだった。何故かそういうものは女の役目だと思いこんでいたから、男である自分が知ったところでと。  今では毎日のように足を運ぶスーパーマーケットの一角には花屋があり、忌々しいあの花が並んでいたら発狂する気さえして、いつも避けて通るようになってしまった。  ああ、今年もあの日がやってくる。
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