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不登校の生徒がなんとか学生生活のやり直しをするための高校。今でもそんな印象だ。流行りのソーシャルゲームにどっぷりとハマって、中学生としての生活を捨てつつも家庭学習だけはこなしてきた俺は、ハイもイイエもなく親の手でそこへと入学させられた。履歴書を送って校長とちょっと喋れば入れるような高校だった。
学校側としては成績不振を気にした生徒が少しさかのぼって勉学に励める学校のつもりだったらしいが、入学してからの事件の起こりようを振り返らなくともわかったことだ。あの学校は、他校で問題を起こした生徒の最後の受け皿である。当然のように真面目な高校生としてデビューを計った生徒は、そいつらに突かれてどんどん不登校になり、長期休みが終わるたびに名簿から数名ずつ消えていくという大惨事。よく生き残れたものだ。
卒業までこぎつけられたのは、元々そこまで勉強が嫌いではなく、かつ、自ら飛び出ることを望んだやつらとの会話も軽くこなせる生徒だけ。入学式の人数から考えるとそこにいた生徒は七割ほど消し飛んだ。
日ごと空席が目立ち始める教室内では、当然のようにグループが出来始める。最初は席が近い生徒同士。徐々にやってくる敵に倒されて姿を消す仲間を補充したくなれば、やはり当然のように最初から教室にいたグループに声をかけて合流してしまうのだ。その中でもインドア趣味、アウトドア趣味で派閥が分かれ、教室はだいたいその他に含まれる生徒をひとつのグループに例えて、四分割されていることが多かった。
席替えで俺の目の前の席にやってきた女子生徒は、入学式に貧血かなにかで途中退席するためよろよろと俺の目の前を歩いていった生徒だった。入学してからも思春期をこじらせた結果あまり女子と話をしてこなかったが、あのときの、なんて思うと声もかけてしまうのがダメな男の性質というもので。
どこの令嬢だと勘違いしてしまいそうな姿勢のよさと長い黒髪に、惹かれていたとも気付かずに。
まずは共通の好きなものを探した。俺たちの場合は音楽だ。好きなアーティストが重なったことで必死になって友人に協力を仰ぎ手に入れたライブチケット。二枚あるその片方は当然彼女のぶんである。
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