(〇二)

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 その様子を見ていた、警部の楠 直樹(四十三歳)が、 「管理官」  と、声をかけた。  楠はスポーツ刈りの髪型をしており、太い眉に鋭い眼をした、中肉中背のガッチリした体格の男だった。 「どうですやろ、今のところは大きな事件も応援要請もありませんし、ここは所轄の迷惑にならない程度に、捜索をさせてやっては…」  楠のその言葉に、青葉はニヤニヤと滝矢を見る。  滝矢は不満そうな表情をするが、背後からポンポンと肩を叩かれ、そちらを見る。  叩いたのは、格闘家に近い体格に短髪で浅黒く野性的な顔をした、警部補の葛城雄也(三十八歳)だった。 「そう、くさるなよ」  葛城は笑顔で言った。  霧島は速水を呼び、 「こちらの手が足らなくなったら中止するという条件で許可したるわ」  と、言った。 「ありがとうございます」  速水は頭を下げて礼を言った。 「所轄の方にも、私から言っとくから、迷惑をかけんようにするんやで」 「はい」 「しかし、管理官。速水一人ってのはまずいですやろ」  と、声をかけたのは、警部補の加賀屋 蓮司(三十五歳)だった。  彼は鼻筋の通った知的な二枚目で、滝矢と同じ気性だが、やや柔軟性もある。細身だがガッチリした長身の持ち主だ。  彼は刑事は二人一組の行動が原則であるということに従って、意見しているのだ。 「そうやな…」  霧島も呟くように言って、誰と組ませるか思案した。 「あの、そのことなんスが、管理官…」  と、速水が口を開く。 「なんだ?」 「できれば、宇野を連れて行かせて欲しいんスけど…」  名前を呼ばれた当人の宇野朱里(二十三歳)は、パソコンで書類作成をしていたが、急に名前を呼ばれたので、顔を上げて眼を丸くした。  朱里は速水と同じ巡査で、ショートカットの髪型に、薄いピンクの縁をした眼鏡をかけた、唇の少し厚い、ふっくらとした顔の女性である。  今日の朱里は黒のパンツスーツだった。 「宇野を? なんでや」  と、霧島が聞く。 「はあ、春香の通ってる高校が女子高なんで、男二人ってのはどうも…」  速水は苦笑いしながら言い、 「それと、宇野なら春香なんかと世代も近いし、何かと助かると思うんスわ」  と、続けた。 「それって、私はオバサンってことなん? 速水君」  そう口元だけ微笑んで、鋭い眼つきで言ったのは、巡査長の氷室冴子(二十六歳)だった。
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