(〇三)

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 速水は羽田亜美の住所を、春香から聞いていたので、まずは朱里と共に覆面パトカーに乗り、速水の運転で、豊中市にある彼女の家に向かった。  羽田家のある豊中市の新千里北町は、 千里中央駅から近く、また、豊中市でも箕面市に近い場所に位置していた。  そして、新千里を冠する地域は、マンションや団地が数多く建ち並び、千里ニュータウンと呼ばれる地域である。  無論、亜美と小学校の時から一緒だという春香も新千里北町だ。  羽田家が住む高層マンションの来客用駐車場に車を停めた速水は朱里と共に、五階に上がり、羽田家のドアのインターフォンを鳴らした。  中から疲れた感じのする年配の女性の声がしたので、速水は名前と身分、そして、来意を告げた。  少し間があり、ドアが開いて、インターフォンで対応したと思われる四十代ぐらいの女性が出て来た。  女性は歳相応の美人なのだろうが、少しばかり憔悴して見えた。  速水は警察バッジを見せて改めて名乗り、朱里も紹介した。  女性は羽田美恵(四十二歳)、亜美の母と名乗った。  速水と朱里は、リビングに通された。  二人は食卓用のテーブルに、美恵と向かい合うように座った。 「あの、俺…いや、私はですね…亜美ちゃんの友達の…」 「春香ちゃんの従兄妹の方ですよね? 昨日、春香ちゃんから連絡があって、伺ってます」 「あ、そうですか」 「春香ちゃん、当てにしていいって自慢してましたわ」  美恵はそう言って、少しだけ微笑んだ。  その笑みが痛々しく見えたので、速水は愛想笑いを返すだけだった。  そんな速水に焦れったさを感じた朱里が、 「早速ですが、亜美さんがいなくなった前後のことを、話してくれませんか…」  と、美恵に尋ねた。 「前後のことと言われましても、これと言ったことはないんですけど」 「月曜日の朝は、いらしてたんですよね?」 「ええ」 「その時の様子はどうでした? いつもと違うと感じたことは無かったですか?」 「いえ、別に…」 「そうですか…」 「あの、これ…」  と、美恵はテーブルに一枚の写真を置き、 「娘の亜美です」  と、言った。  速水が写真を手に取り、横から朱里が覗き込む。  写真には、赤いネクタイをした、紺色のブレザータイプの学生服を着た、色の白い、物静かな感じの美少女が写っていた。
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