(〇三)

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 髪は長く、睫毛もやや長い感じがする。  朱里は顔を写真から美恵に戻し、 「いつ頃、おかしいと気づきました?」  と、質問した。 「おかしいこと…? ですから、特に…」  美恵が怪訝な表情をする。 「すいません、私が言いたいのは、いつ、失踪したかもしれないと、思われたか…ってことです」 「それでしたら、夕方の七時ぐらいです」 「ずいぶんと早く判断されましたね」 「え?」 「だって、私なんか高校の頃は、夜の八時九時位までなら、クラブや友達とかの付き合いで遅くなったりしましたよ」  この朱里の言い方に、速水は足で軽く小突いた。  しかし、娘の安否に気を取られている美恵は、気にせず、 「娘は時間にキッチリしたコでしたから、いつも、七時までには必ず帰るんです。それに、遅くなる時は六時頃までに連絡をくれますから…」  と、説明した。 「でも…」  と、朱里が何か言おうとするが、 「私たちはこの後、亜美ちゃんの通う学校に行くんですが、担任の先生以外に、会っておいた方がいい人っていますか?」  と、速水は遮った。 「そうですね…」  美恵は思案し、三人の名をあげた。  一人目は亜美が所属している吹奏楽部の部長で三年生の久保田優子。  二人目は同じく吹奏楽部の一年生、飯島加奈子。  そして三人目は、吹奏楽部の顧問である、教師の津田武久(二十七歳)。 「皆さん、クラブの人達ですね。クラスメートとかはどうなんです?」  と、速水は聞いた。 「何人かはいますけど、特に親しいと言えるのは、春香ちゃんぐらいかしら…」 「春香…ですか」  速水はそう呟いて、今一度、亜美の写真を見る。  物静かな雰囲気を持つ亜美と、賑やかな春香では性格が違いすぎる。  しかし、昔から正反対な性格の方が相性がいいというから、そんなもんだろう。 「それではよろしければ、亜美さんの部屋を見せていただけますか?」  と、速水が言った。
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