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亜美の部屋は六帖の洋室で、シングルベッドに勉強机、本棚と、高校生としてはありがちな部屋だった。
部屋は整然としており、勉強机の上も、綺麗に片付いてある。
三人は亜美の部屋に入り、速水と朱里が、なるべく散らかさないように心がけて、捜索する。
「亜美さん、楽器は何を?」
と、速水が聞く。
「クラリネットです」
「そうですか…」
「お子さんは、亜美さんだけなんですか?」
「ええ」
すると、
「綺麗に片付いてますね。私なんか散らかしっぱなしで、よく親に怒られましたわ」
と、朱里が感心するように言った。
「誰に似たのか、綺麗好きなコでしたから」
部屋を一通り捜索したが、何も手がかりになりそうなものは無かった。
しかし、朱里には気になることが一つだけあった。
「あの、パソコンの類いは無いんですか? 亜美さんぐらいの世代だと、ノートパソコンぐらい持ってそうな気がするんですけど…」
美恵は机の上を見て、
「あら? いつもは机の上にあるんですけど…」
と、不思議そうに言った。
「ノートパソコンなら、閉じてその辺にあるんやないか?」
と、速水は朱里に話しかけるように、周囲を見渡すが、
「無いな…」
と、呟いた。
「亜美さんが持ち出したのでしょうか…」
朱里は再度、美恵に聞いた。
「多分…」
「ノートパソコンのサイズ、わかりますか?」
「ええ、結構小さいサイズです」
「すると十インチぐらいですか?」
「そうだと思いますけど…」
速水と朱里は、ここが頃合いだと見計らい、速水が、
「それでは、学校へ行ってみますので、失礼します」
と、言った。
「よろしくお願いします」
「あの…」
と、朱里が声をかける。
「ご主人は、お仕事ですか?」
「ええ。本人もひじょうに気にしているんですが、どうしても休めないもので…」
「そうですか」
こうして二人は羽田家のマンションをあとにした。
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