(〇五)

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 津田の証言は、これをほぼ裏付けていたのである。 「部活の様子はどうでした? いつもと変わったところとか、ありませんでしたか?」 「私の見る限り、ありませんでしたね」 「じゃあ、津田先生が最後に亜美さんを見たのは、いつですか?」 「そうですね…部活が終わった時ですかね」 「具体的には何時頃ですか?」 「正確なところはわかりませんが、大体、夕方の五時半頃だと思います」 「最後に見た場所は?」 「音楽室です」 「その時は当然、他の生徒さんもいたんですよね?」 「ええ、そうですね」  ここまでの質問で朱里は、話が進展しないと感じたので、違った角度から突っ込んでみることにした。 「では、津田先生から見て、亜美さんはどんな生徒ですか?」 「そうですね…一言で表すなら、優等生ですかね。音楽のセンスは抜群ですし、学校の成績も文句無し、正に非の打ち所の無い生徒ですね」 「人間関係はどうでしたか? 特に仲の良い生徒さんとかについて…」 「私は部活動の範囲でしかわかりませんが、吹奏楽部部長の久保田優子とは、よく話をしてますね。あと、一年生の飯島加奈子の面倒をよく見てましたね」  美恵と同じ答えだ。  しかし、改めて聞いてみて、速水には疑問が浮かび、 「あの、部長の久保田さんは何となく理解できますが、一年の飯島さんはなんでですか? 後輩は他にもいるんでしょう?」  と、質問した。 「飯島は羽田さんと同じクラリネットですから、よく話をするんですよ」 「しかし、クラリネットの後輩は飯島さんだけやないのでは?」  速水の質問に津田は、 「そうですが、相性というかウマが合う…ってことやないですか? 」  と、軽く微笑んで言った。  速水は納得して朱里に続けるよう合図した。  しかし、これ以上質問を思いつかない朱里は、 「私からは以上です」  と、速水と津田のどちらともなく言った。  速水にしても質問を思いつかないので、 「あの、授業時間やいうことは承知していますが、なんとか久保田さんと飯島さんの二人とお話することはできませんか?」  と、津田に聞いてみた。  今は行方不明というだけだが、もし、亜美が一刻を争うような状況にいては…と思った速水の焦りにも似た質問だった。 「私の一存では返事はできませんので、それぞれの担任に聞いてみましょう」
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