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四月下旬、ゴールデンウィーク前の木曜日の夕方、仕事を終えた速水時貞(二十五歳)は、地下鉄御堂筋線の千里中央駅を降りて、待ち合わせ場所に向かって足早に歩いていた。
仕事が終わる少し前に、待ち合わせ相手から、相談があるので会いたい…といったラインが届いたのである。
千里中央駅は大阪府豊中市に位置し、大阪の南北を走り、大動脈といわれる地下鉄御堂筋線の北の終着駅である。
しかし、正確には御堂筋線から直結している北大阪急行電鉄と呼ばれる、地下鉄とは別の鉄道会社の駅なのである。
速水は二十五歳だが、身長はやや低めで童顔、その為か、全体的にまだ高校生の様な雰囲気がある。
そして彼は、これでも大阪府警捜査一課の刑事である。
ちなみに階級は巡査。
速水は待ち合わせ場所であるコーヒーショップの前に到着すると、待ち合わせ相手がまだ来ていないことを確認し、
(なんや、俺の方が早かったんかいな。焦る必要なかったな)
と、拍子抜けした。
速水はスマホを出すと、ラインで待ち合わせ相手に、先に店内にいることを伝えようとしたが、
「お待た?♪」
と、元気な若い女の子の声がしたので、そちらを見た。
そして、速水は声の主に、
「なんや、その格好!」
と、驚いた。
速水の待ち合わせ相手は、青いスニーカーを履き、デニムのショートパンツに胸の谷間が見えそうな薄いピンクのシャツ、そして黒のジャケットを羽織り、青い小型のリュックを背負っていた。
そして、ややロングの髪はポニーテールにしており、やや丸みをおびた顔には幼さと愛嬌がある。
その顔と発育のいい身体がアンバランスだ。
「お前、ンなカッコして、叔母さんに文句言われへんか?」
速水は呆れ顔で言った。
「あ、トキちゃん、ヤラシイ眼で見てる」
と、その女の子は、からかうように速水に顔を近付けて言った。
女の子は河西春香(十七歳)、高校二年生で速水の従兄妹である。
「アホ」
と、速水は春香の頭を軽く叩いた。
「ちょっと時間あったから、その辺ブラブラしてたら、二回もナンパされたわ」
春香は自慢するように言った。
「帰りは送るわ。せやないと、俺が叔母さんに怒られるさかいな」
速水は疲れたように言うと、春香の背中を押して、店内へ入った。
席についた二人は、メニューを見て注文をする。
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