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春香はいちごパフェ、速水はアイスカフェオレである。
「で、相談したいことてなんや? 好きな人でもできたんか?」
と、速水がからかうように言うと、
「そんなんやったら、トキちゃんなんかに相談せえへんわ」
そう春香にあしらわれた。
そんな二人を遠目に見ていると、速水が童顔のためか、同世代の恋人同士にしか見えない。
「ほな、なんや?」
「…あんな、うちの友達が行方不明になってん」
「行方不明?」
「うん」
「いつから?」
「ん?、今日で四日かな」
速水は日にちを計算した。
その友達は週明けの月曜日に行方不明になったことになる。
「その友達っちゅうのは、同級生かなんかか?」
「同じクラスのコで羽田亜美ちゃんていう、小学校からの幼馴染みやねん」
「ふうん…」
「トキちゃんもウチに来た時に、何回か見てると思うで。ほら、ちょっと色の白い、お姫様みたいな感じのコで…」
春香に言われて思い出したのか、
「ああ、春香と正反対の、あのおとなしそうな女の子か」
と、速水が率直な感想を述べた。
「正反対は余計や」
と、春香が少しむくれる。
そこへ、二人の注文が届く。
速水はストローをカフェオレのグラスに入れて、カラカラとかき混ぜる。
「それで、俺にどないせえちゅうんや?」
「トキちゃん、刑事やろ。探してくれへん?」
「アホ、そら無理や」
「なんで?」
と、春香が不満そうに言う。
「なんででもや。第一、五日も行方不明になっとったら、その亜美ちゃんの親がとっくに捜索願を出しとるやろ。違うか?」
「うん…お母さんもそない言うてたわ」
「せやろ? せやったら警察としても、今はこれ以上なんもできへんで」
「そんなあ」
「そんなもこんなもあるかい。さ、そのパフェ食ったら、家まで送ったるわ」
速水が素っ気なく言うと、
「なんで無理なん?」
そう春香が質問した。
「大人の事情や」
「ずっる?! 自分も子供みたいな顔して、何が大人の事情なん」
と、春香が速水に喰ってかかる。
「うるさいわ。お前と幼馴染みってことは、豊中の警察署に捜索願が出てるんやろ? せやったら、あとはそこに任すしかないわ。大体、なんでお前がそこまですんねん」
「心配やからやん。それに、ウチにはトキちゃんていう刑事の従兄弟がいるからや」
「刑事は便利屋とちゃうで」
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