(一八)

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 宮田鈴江を確保したのは夕方だったので、彼女の取り調べは翌日回しとなった。  その間に、病院へ搬送された久保田優子が眼を覚ましたと教えられたので、加賀屋と冴子が供述を取ることになった。  ベッドに横になっている優子は、加賀屋と冴子が来ると、半身を起こした。 「いいのよ、横になってて」  冴子が優しく声をかけた。  加賀屋は一歩下がり、冴子がベッド横の椅子に座った。 「どういうことか、話すことができる?」  優子は小さく頷くと、ポツリポツリと話をした。  彼女の語ったところによると、宮田鈴江は真性のレズビアンだったという。  そして優子はレズビアンではない。  では何故、優子が鈴江とマンションにいたのか…  鈴江は二年近く前から、飯島加奈子と関係があったという。 「ちょっと待って、飯島さんはその頃やと中学生よ。宮田との接点が無いわ」  と、冴子が話を止めて質問した。 「宮田先生と飯島さんは、ネットを通じて知り合ったそうです…」  二人は元々、吹奏楽が趣味ということで知り合ったらしいのだが、いつの間にか大人の関係になったと言う。  優子が言うには、鈴江にはミステリアスな魅力があるらしい。  春香は無愛想と言っていたが、これは捉え方なんだろう。  そして、加奈子は鈴江の傍にいたくて、桜蓮女子高を受験し、入学した。  ところが、鈴江は優子に関心を持ち始めた。  きっかけは去年の一学期中に、鈴江が体調を崩して、吹奏楽部の顧問を退いた時である。  優子は鈴江の身体を心配して、励ましたりする為に、何度かプライベートでも会いに行ったのだ。  どうやらそこを、鈴江が住む本来のマンションの居住者に目撃されたらしい。  そして二人目の女子高生は、加奈子だろう。  とにかく、そんな優子に惹かれた鈴江は、加奈子が高校に入学してくると、その存在が重くなり、彼女を邪険にした。 「宮田はよく、そんなことまであなたに話しましたね」  と、冴子が不思議そうに聞いた。 「多分、私に振り向いて欲しかったんやと思いますけど…」  そう言いながらも優子自身、鈴江の心理状態が理解出来なかったと言う。  ただ、今の話でわかったことは、加奈子は鈴江に捨てられたと思い、自殺未遂事件を起こしたのだろうということだ。  冴子がそのことを優子に伝えると、 「飯島さんが…」  と、呆然となった。
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