(一八)

3/4

51人が本棚に入れています
本棚に追加
/70ページ
「ねえ、久保田さん、肝心なのはあなたが眠らされた前後の出来事についてなの。一体、何があったん?」 「わかりません…ただ、水曜の夜に、宮田先生から、黒沢さんが呼んでると連絡を受けて、関大前近くにある宮田先生の練習場所に呼び出されて、先生が出してくれたコーヒーを飲んだところまでは覚えてるんですけど…」  どうやら、そのコーヒーに睡眠薬を入れられたようだ。  しかし、気になったのは、練習場所と呼ばれる、優子が発見され、鈴江が確保された場所についてだったので、そのことについて聞くと、 「はい、宮田先生、この春に音楽の練習場所を持つと言って、部屋を借りたんです」  と、答えてくれた。 「そう…ところで、あなたと黒沢さんはどういう関係なん? 今も名前が出たけど…」 「私が時々、宮田先生のマンションを訪ねて行った時に知り合ったんです」  そして、時々話すようになり、優子は兄のように慕い始め、二人で出かけたりもしたと言う。 「もしかして、付き合ったりしてたん?」  冴子はそう言いながら、黒沢と優子が写っている写真を見せた。  優子は写真を手に取り、 「黒沢さんは好意を寄せてくださってたみたいですけど、私は悩んでました…」  と、言った。 「何故?」 「私、不器用ですから、恋愛と音楽の両立なんてできません…」  優子は俯くと、疲れた表情をした。  優子はまだ、黒沢が殺されたことを知らないようだが、冴子は今は言うべきではなく、潮時だと見て言った。 「最後に二つ、これは事件とは関係無いことやと思うんやけどね…」  冴子はそう言って、さり気なく加賀屋を見ると、彼は無言で部屋を出て行った。 「あなたが学校で、他の女子生徒とキスしてるのを見たって話があるんやけど…」  と、冴子が聞いた。  優子は少し思い出すように考えると、 「ああ、あれはしたんじゃなく“された”んです」  と、言った。 「された?」 「はい。私、宮田先生から飯島さんとの仲を聞かされた少し後、その飯島さんから話があると言われて、放課後に会ったんです…」  優子は加奈子から、鈴江に関わらないで欲しいと懇願されたと言う。  しかし、優子は逆に加奈子のためを思って、鈴江との関係は止めるべきだと忠告した。
/70ページ

最初のコメントを投稿しよう!

51人が本棚に入れています
本棚に追加