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「ねえ、久保田さん、肝心なのはあなたが眠らされた前後の出来事についてなの。一体、何があったん?」
「わかりません…ただ、水曜の夜に、宮田先生から、黒沢さんが呼んでると連絡を受けて、関大前近くにある宮田先生の練習場所に呼び出されて、先生が出してくれたコーヒーを飲んだところまでは覚えてるんですけど…」
どうやら、そのコーヒーに睡眠薬を入れられたようだ。
しかし、気になったのは、練習場所と呼ばれる、優子が発見され、鈴江が確保された場所についてだったので、そのことについて聞くと、
「はい、宮田先生、この春に音楽の練習場所を持つと言って、部屋を借りたんです」
と、答えてくれた。
「そう…ところで、あなたと黒沢さんはどういう関係なん? 今も名前が出たけど…」
「私が時々、宮田先生のマンションを訪ねて行った時に知り合ったんです」
そして、時々話すようになり、優子は兄のように慕い始め、二人で出かけたりもしたと言う。
「もしかして、付き合ったりしてたん?」
冴子はそう言いながら、黒沢と優子が写っている写真を見せた。
優子は写真を手に取り、
「黒沢さんは好意を寄せてくださってたみたいですけど、私は悩んでました…」
と、言った。
「何故?」
「私、不器用ですから、恋愛と音楽の両立なんてできません…」
優子は俯くと、疲れた表情をした。
優子はまだ、黒沢が殺されたことを知らないようだが、冴子は今は言うべきではなく、潮時だと見て言った。
「最後に二つ、これは事件とは関係無いことやと思うんやけどね…」
冴子はそう言って、さり気なく加賀屋を見ると、彼は無言で部屋を出て行った。
「あなたが学校で、他の女子生徒とキスしてるのを見たって話があるんやけど…」
と、冴子が聞いた。
優子は少し思い出すように考えると、
「ああ、あれはしたんじゃなく“された”んです」
と、言った。
「された?」
「はい。私、宮田先生から飯島さんとの仲を聞かされた少し後、その飯島さんから話があると言われて、放課後に会ったんです…」
優子は加奈子から、鈴江に関わらないで欲しいと懇願されたと言う。
しかし、優子は逆に加奈子のためを思って、鈴江との関係は止めるべきだと忠告した。
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