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ゴールデンウィークの祝日の昼、速水は春香と梅田の繁華街を歩いていた。
亜美に関することを聞かされた春香が落ち込んでいたので、速水が気晴らしに誘ったのだ。
「はぁ?、ショックやわぁ…先生と付き合ってるどころか、妊娠やなんて…」
「まあ、起こってもうたことはしゃあないやろ」
「うん…」
「それで、学校の方はどないなっとる? 津田先生、教師辞めたて聞いたけど…」
「うん、音楽関係の仕事をするとかって聞いたわ」
「亜美ちゃんの方は? 家の方もエラい騒ぎやないんか?」
「そうやねんけど、津田先生が責任取る言うて、亜美ちゃんの家に挨拶に行って、なんとかまとまるみたいやわ」
「そりゃ良かったわ」
しかし、春香の顔は晴れない。
「どした?」
「うん…亜美ちゃんて、先に大人になったんやなあって…」
「そない思うんやったら、お前も早う彼氏を作るんやな」
速水はそう言って欠伸をした。
春香はそんな速水の左腕に両手を回し、
「ね、ホンマに今日、好きなもん買ってくれるん?」
と、聞いた。
「あ、ああ…」
速水は落ち込んでる春香を励ます意味で、今日のショッピングに誘ったのである。
「そのかわり、あんま、吹っかけんなよ」
財布の中身を想像して、速水は不安そうに言った。
「ど~かなあ」
春香が笑って言うと、両手に力をこめた。
(終)
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