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翌日、府警本部のゼロ係の部屋で勤務についた速水は、早々に自席にいる、上司の霧島健介警視(五十歳)の机の前に、話しにくそうに立っていた。
霧島は長身痩躯で口髭のあるダンディという言葉の似合う人物で、眼つきは鋭いが、その表情は以外と優しい雰囲気を漂わせている。
そんな霧島を含め、この部屋には、男九名、女二名の刑事がいる。
「どないしたんや?」
と、霧島が尋ねる。
「はあ、実は…ですね…」
「…?」
速水は従兄妹の春香のことを含め、羽田亜美の行方不明について説明した。
霧島は話を聞き終えると、ひとりでに頷いていた。
すると、速水の背後から、
「そら、友達としては心配やろなぁ」
と、明るい声がしたので見てみると、扇子片手に、身長が低く白髪を角刈りにした顔の丸い、警部補の村瀬正太郎(五十三歳)が、同情するような表情をしていた。
「ええ、まあ…」
と、速水が曖昧な返事をする。
「…で、お前はどうしたいんや?」
霧島が聞く。
速水は霧島を見て、仕事に支障が出ない程度に、亜美の捜索をしたいと進言した。
すると、
「そらダメだろ」
と、声がした。
声の主は巡査長の滝矢雅人(二十八歳)だった。
彼は目つきの優しい甘いマスクをした二枚目だが、性格は律儀なのか、顔の優しさに似合わず、手厳しい面がある。
「なんでですか?」
速水は喰ってかかるように滝矢を見る。
「お前にもわかっているはずや、速水。俺たち捜査一課は、事件性が無い限り動けんし、所轄署も面子があるさかい、協力要請もないのに、府警本部の刑事が来たら面白くないやろ」
滝矢はそう突き放すように説明した。
「かー、あったまかてえなあ、滝矢は」
と、反論したのは滝矢と同じ巡査長だが、先輩格の青葉和臣(三十歳)だった。
青葉は滝矢のような二枚目ではないが、優しい眼をしており、引き締まった口元は、どこか頑固なガキ大将を思わせる雰囲気を持っている。
「女の子が行方不明になってんだぜ、面子もクソもあらへんやろ」
と、青葉は滝矢の意見を一蹴した。
そんな青葉を滝矢は睨みつけ、青葉も睨み返すが、
「まあまあ、そうとんがらんときや、二人とも」
と、やや肥満気味で、愛嬌のある丸顔をした巡査部長の佐和 彰(三十四歳)が割って入る。
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