鳥籠と花嫁と真相

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 始まりは猜疑心から――でも、今は心から信じている。この、不器用で愛しい人のことを。  結婚式のことを思いだして、ふふっと笑みをこぼすと、颯一郎さんはふわりと私の体を抱きしめた。大きなおなかを包み込むように。 「君を、君と築く家族を守っていくから」  五年前と同じ言葉――  颯一郎さんも、同じことを思い出していたのかもしれない。 「私も、この先、あなたと、あなたと築く家庭を、幸せにしていく」 ゆっくり重なる唇から、溶けるような熱を感じた。この例えようのない温かさを、幸せと呼ぶのだろう。 「君を独占できるのももう少しの間だな」  優しくお腹に触れながら、颯一郎さんはそう呟いた。二人の時間を、今は大切に刻んでゆきたい。そして、これから始まる三人の時間を、愛してゆきたい。 「ほら、動きましたよ」 「本当か!」  優しく触れる手は、温かい。 「颯一郎さん、大好きです」 「どうしたんだよ急に」 「いつだって、何度だって言いたいのです」 「俺もだ。君が好きだ」  互いの顔がほころぶ。  私たちの間で、すれ違いが起こることはもうない。もう二度と、必要な言葉を交わすことを怠ったりしない。  私は、誰の代わりでもなく、私として、私を必要としてくれる颯一郎さんと、いつまでも並んで歩いていきたい。  この先、ずっと―― FIN
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