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1章
シトシトと音を立てて雨が降る。
駅前の広場、金曜日の午後八時。行き交う人の波が、私達をよけていく。
私の目の前には、彼。
傘も差さずそこに立っている。
「ごめん」
普段口にしたことのない言葉を彼はさっきから呟いている。
繰り返し、何度も。
雨粒が私の傘にあたる。
パタパタと音を立てて。
まるで彼の声を邪魔するように。
聞きたくない言葉を、かき消すように。
雨粒が、彼の髪を濡らしていく。
ポタリポタリと滴る。
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