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野本の胸に倒れ込んだ彩香を優しく抱き止めると、野本はその表情を確認しようと髪を指先で避けながら、頬を撫でた。 「大丈夫か?」 心配そうに橋本が顔を覗き込む。 「ええ…当時の俊介さんの感情とリンクしたんでしょうね」 不思議な事を言うから、橋本と貴久は野本を見る。 「一般人の彼女が警察の手伝いをするのにはそれなりの理由があるって事です」 そう言われれば、橋本は納得したようだ。 話を逸らすように野本が貴久に視線を向けると、貴久は資料を閉じた。 「俊介さんが誘拐されたのは間違いありません。ただの失踪じゃない。この事実を隠すために、如月先生は隠ぺいを行ったんです」 そう言った後、貴久はもうひとつのファイルを取り出した。 「社会人になってから、俊介さんは病院に行って診察を受けてます。彼は……」 言葉に出せず、貴久は目を伏せた。
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