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背中を向けたまま、
「昨日の事…ほとんど覚えていないのですが……」と、言うと、
「嫌でも思い出しますよ。だから今は忘れててもいいんです」
そう言って手のひらを何度も指でなぞった。
嫌でも思い出す…とは、どういう意味なのか。
その時の彩香にはまったく見当もつかなかった。
昨日の事はほとんど覚えていない。
野本と一緒にアパートの前まで来て、橋本に声を掛けられた。
部屋の中には俊介と本木と、知らない男が一人いた…のは覚えている。
話した内容も、磯島議員と俊介の父親、拓郎の接点についてだと思ったが、その後の事がすっぽりと記憶から抜けていた。
気付けば部屋のベッドの上に横たわっていて、その後、野本からお風呂に入るよう言われ、夕飯も野本がデリバリーを頼んでいた。
その後も、疲れているだろうから休んでください…と、野本に言われ、すぐにベッドに入り…今だ。
いったい昨日は何があったのだろう……。
のそっとベッドから身体を起こそうとして、また野本の腕に引き留められる。というより、もうシートベルトよりしっかりと身体を固定されてしまっていた。
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