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「野本さん…起きないと。確か今日は優衣香ちゃんと買い物に行くんでしたよね?」
夕べ、寝る前に野本から言われた記憶がある。
優衣香の着替えを一緒に買いに行ってやって欲しい…と、神藤から電話を受けたらしい。
会えずに心配だけしている時間より、たった数時間でも会える方が安心するから快諾した。
女として理解してあげられる部分もあるだろうし、教えてあげられることもあるかもしれない。
「もう少しだけ…こうしていたいです」
今日に限って随分甘えて来る……。
でも、野本に甘えられるのは悪い気はしない。
普段はキリッとしていて、弱みを見せない男だから、自分にだけ見せる姿だと思うと、胸がキュンキュンする。
でも…寝起きはできれば避けたいところだ。
口臭とか、目ヤニとか……。
やっぱり無防備な部分が表立って出てきてしまうし、鏡も見れないから確認もできやしない……。
身体を固めたままいると、野本が髪を撫でてくる。
「起きましょうか。その代わり…今夜は思う存分甘えますから」
そう言われて、更に彩香の身体が硬直する。
──今日も泊まるおつもりですか……?
そろそろ翔から安否確認の電話が鳴りそうな気がするのだが、野本が気にする様子は無かった。
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