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運転席から降りた野本が助手席に回って扉を開けてくれると、手を差し出す。
今までなら当たり前の事だったのに、あの言葉を聞いた後の今は、少し照れてしまう。
そっと野本の手に自分の手を重ねると、思い切り引き寄せられ、助手席から抜け出た彩香の身体は、野本の腕の中に収まってしまった。
ちょうど店に入ろうとしていた二人の男女がこちらを見て「キャー」と、小さな声を上げている。
「あんなイケメンに抱きしめられたいんだけど」と、彼女が言うと、男は、
「どこにでもイケメンがいると思うなよ。っていうか…あの人、翔に似てない？」
と、なんだか聞き慣れた名前がその口から飛び出したから、彩香は目を見開いて野本の胸を両手で押した。
「アイツのせいで俺の日常も壊されていくな……」
と、つぶやきながら、野本は彩香の身体を解放した。
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