女子会

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――― 大事なスーツが一着ダメになった。 あんな山奥に行くなら作業服で行かせて欲しいものだが、「お前は指揮を取るだけでいい」と、本田から指示を受けたので、五十嵐はスーツ姿で定山渓の山の中に入ったのだ。 前日の深い霧で地面はドロドロになり、とてもじゃないがビジネスシューズで歩けるような状態ではなかった。 長靴だけは用意していったが、滑って転んで尻餅をついて泥まみれになった。 「お漏らししたみたいだな」と、黒崎に笑われ、 「誰のせいですか!」怒るような仕草を見せる。 実際転びかけたのは黒崎で、前方を歩いていた五十嵐の上着の裾を引っ張ったのが原因で転倒したのだが。 まあ、お陰で収穫もあったしな…と、ズボンだけジャージに履き替えた五十嵐は椅子にふんぞり返った。 現場から見つかった遺留品と、優衣香の証言が一致した。 次は被害者の自宅を調べるのだが、一度鑑識が入った部屋で新たな物証を見つけるのは難しいな…と、思う。 何か的を絞らないと……。
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