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彩香が気遣って飲めるものを訊いて注文したが、その間も何度も断っていた。「水で充分です」と。
ここまで優衣香を傷つけた拓郎が憎いとさえ思える。
「うちのお父さん、優しい?」
彩香が訊くと、優衣香が微笑む。桜みたいにふわっと色づいた優衣香の顔を見ると、彩香もホッとした。
「先生…可愛らしい感じがします。登季子さんも面白いです」
そう言われると彩香も笑ってしまう。
登季子さんが面白いのは天然だし、神藤も少し天然なところがある。
あの二人を見ていると、たまに思うのだが、両方ともボケの漫才を見ているようだ。
「あの家にいる間だけでもお父さんって呼んであげてくれないかな?娘ができたみたいで喜ぶと思うの」
それを聞いていたそらは、あなたも娘でしょ…と、思ったが口には出さずに黙って隣のテーブルに座っている。
「お父……」
言いかけて、優衣香はつらそうな顔をした。
拓郎を思い出してしまうのだろう。
それだけ拓郎を恐れているという事なのか。
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