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「無理しなくてもいいよ」
彩香がそう言って優衣香の頭を撫でると、優衣香は少し瞳を潤ませる。
早く拓郎を捕まえないと、優衣香はずっと解放されないままだ。
「飲んだら服、買いに行こうか」
彩香が言ったなら、優衣香はコクリと頷いた。
妹というには歳が離れているが、一緒に居ても違和感はない。
喫茶店を出てデパート内の若者向けの洋服屋に入る。
あれやこれやと優衣香の胸に服を合わせ、二人で微笑み合っている姿を見れば、姉妹以外には見えない。
居心地が悪かったのは野本とそらだ。
整った顔立ちの二人がスーツ姿で店内にいたなら、若者たちは驚くに決まっている。
「なに?ドラマ?撮影?」
なんて、あちこちで声が上がっていたが、二人が微動だにしないからドラマの撮影かと思ったようだ。誰一人として直接声を掛けてくることは無かった。
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