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開け放たれたままの玄関のドアの向こうは民家が並んでいる。こんなことをしていたら、民家の窓からこの玄関の様子が見えてしまいそうだ。
「これ以上俺を刺激しないでください。そして、咲楽にも近づかないで」
首筋から口唇が離れると、今度は彩香の口唇を指先で撫でる。
「いいですね?」
彩香が恐怖で何も言えずにいると、カタン……と、音が鳴り響いた。金属製の手すりになにかがぶつかったような音。
ふと、二人の視線がドアの外に向けられると、そこには咲楽が立っていた。
「さ…咲楽ちゃん……」
彩香が声を上げた。
俊介は固まったまま、目を大きく見開いていた。
今にも泣き出しそうな咲楽の顔。
手に下げていたビニール袋を掴むと、咲楽はそれを俊介に向けて投げた。
思わず俊介と彩香は物が飛んできたことに身構えたが、俊介の腕にぶつかって落ちたものは軽かった。
「咲楽ちゃん!」
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