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パイプ椅子を持ってきた緒方は、大人しく復顔の様子を見ていた。
やはり緋浦は黙ってると美人なのだが…と、余計なことを思いながら、緒方はその細かな手作業を見つめていた。
そこへ現れた本田が、緒方の肩に手を置いた。
「どうだ?様子は」
本田も緋浦の性格は分かっている。下手に声を掛けたらプライドをズタズタにされることは承知だったからあえて緒方に訊ねたのだ。
「あの調子ならあと1、2時間ってとこですかね」
その回答を聞いた本田は腕を組んで作業中の緋浦を見た。
デジタル時代は便利だが、故障した時が厄介だ。本来ならコンピュータを使ったグラフィック画像なんかですぐにでも復顔は可能だが、現在システムエラーが生じて、コンピュータの修理に時間がかかっていた。
おかげで緋浦は寝る間も削って復顔作業に没頭しているのだが、何せ彼女は変わり者だ。復顔作業を楽しんでいるようにも見える。
「上は何か言ってますか?」
緒方が小声で本田に問いかけると、本田は顔をしかめた。
「今週中に事件を解決しろと言ってる。これだから役人は嫌いだ」
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