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「大丈夫ですよ。登季子さんは口が堅いので」
少し変わり者ですが…とは、口が裂けても言えないが。
彩香が言うのなら大丈夫なのだろう…と、俊介と優衣香は顔を見合わせた。
「話す相手もいませんからご安心ください」
少しだけ重い空気を連れてくると、その直後、一人でケラケラと笑い出すから、彩香は何も言わず二人にケーキとお茶を勧めた。
「それにしても随分急ですねぇ。五十嵐さんや野本さんは一緒じゃないんですか?」
五十嵐を贔屓しながら登季子さんがそう訊いてくるから、彩香はフォークを銜えたままため息を吐き、天井を見上げた。
優衣香と俊介は早くこの場から逃げ出したいのか、急いでケーキを食べてしまったようだ。紅茶が冷めれば、一気に飲み干してしまいそうな勢いだが、まだ飲み干すには熱いらしい。
不意にテーブルの上に置いていた携帯が鳴ると、彩香は画面を確認する。
表示画面には緒方の名前。
画面をスライドして電話に出ると、あの間の抜けた声が聞こえた。
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