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しばらくして玄関のベルの音が鳴ると、彩香はソファから立ち上がって玄関へと向かった。
ドアの向こうに立っているのが誰なのか確認しなくても、なんとなく分かってしまうと、扉を押し開けた。
そこには案の定、野本と五十嵐が立っていた。
「いらっしゃい。どうぞ入ってください」
二人を招き入れると、リビングにいる俊介と優衣香の元に向かう。
ソファに座っている二人を見て、野本と五十嵐は立ったまま声を掛けた。
「このまま優衣香ちゃんだけ署に連れて行きます」
そんな事を言い出すから、彩香と俊介は目を大きくして野本の顔を見た。
「どうして急にそんな事……!」
俊介が声を荒げると、野本は床に膝をついてしゃがんだ。
「優衣香ちゃんに自供してもらいます。そうすれば優衣香ちゃんを警察で保護できますから。保護した時点で優衣香ちゃんのお父さんが行方不明者届を出しても、あなたを逮捕せずに済みます」
野本はそう言って俊介に視線を向ける。
「でも…その後、優衣香はどうなるんですか?」
俊介は自分の事より優衣香の事を優先に考えているようだ。
少し声を荒げながらそう言うと、隣で小さくなっている優衣香の肩を引き寄せた。
──やはり信じてはいけなかった……。
そう思いながら……。
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