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まだ未成年である優衣香を取調室に連れて行くのは可哀想だと判断した野本は、すぐに神藤に連絡とり、病院へと向かった。 診療時間外の診療室を借りて、優衣香の話を聞く事になったのだ。 立ち会う事ができない俊介は、一度部屋へ戻り、優衣香の荷物をまとめ始めた。 神藤が優衣香を預かると言って、いろいろ手を回してくれたらしい。 夜になれば俊介には橋本と本木が付くことになっている。 神藤の家のリビングで資料を眺めながら、彩香は首を傾げた。 優衣香の家庭環境に加えて、俊介の家庭環境や過去の出来事を記した資料には、普通では経験できないようなことが書かれていた。 「俊介さんは誘拐された経験があるんですか?」 遅れてやってきた緒方に訊くと、緒方は彩香の手元の資料に目を落とす。 「9歳の時に誘拐されたみたいだけど、犯人は捕まっていないし、如月さんもショックで記憶障害を起こしたみたいだよ」 どこで誰とどのくらい過ごしていたのか、全く覚えていなかったらしい。 父親が弁護士だとは言っていたが、彼の言う通りのようだ。父親である和久は、悪徳弁護士として何度も脅迫を受け、その度に警察が出動している。 妻の真美も同じで、特別な患者の手術にしか立ち会わないため、急患で運ばれてきた患者を見殺しにしたとして訴えられたことがあるようだ。しかし、夫の和久が弁護して勝訴している。
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